QGIS で森林情報管理

【 前書き 】

 広範囲な山林面積を森林経営計画や長期受委託等で管理されている森林組合や林業事業体、そして行政機関にとって重要なシステムとして活用されている(筈)GIS – Geographic Information System -。

 様々なメーカーさんから、GIS を使って広範囲な森林を一元的に管理出来る様なソフトウェアが販売されている。もちろん無料では無い!そのソフトに関わる開発費・人件費・保守費等々があるので、高価な値が付くのは当たり前でしょう。その費用以上の製品なんだと思う( 費用対効果ですね )。更に、広い面積における作業効率の向上や精度を上げる為には、電子コンパス等の測量器具や GPS 機器( GARMIN 等 )も必須となってくるし、膨大なデータを扱いながら画像として処理が出来る高性能コンピューターも必要となってくる。それらを全て揃えるのに、一体どれくらいの投資が必要になるのだろうか?費用対効果とは言ったが、それに見合う利益を出せる組合や企業がターゲットになるのだと感じる。

 そんな事を感じながら、ずっと疑問に思っていた事があった。
 そんなに投資が出来ないながらも、小規模な範囲でも GIS で管理出来ないのだろうか?

【 当時の課題 】

 皆さんは、ある地番の所在を調べる時にどうしていますか?私は、まず『 宝典 』を使って調べます。これは、先人達が作り上げた最高傑作の1つだと私は信じている。等高線こそないが、山の地形が分かっていれば、大体の境界が分かってくる。どうしても分からない時には、地元の精通者に聞くが、その時に見せる地図はこの宝典になる。それでも分からなければ、現地を一緒に歩いてもらう等々。

 ただ、森林所有者の代が変わっていく中で、この宝典を使ってお話ししてもご理解頂けない場面が多くなった様に思います。さらに、山の何処かは分かっていても、等高線付きの地図で見た場合にピンポイントで表す事が出来ず、大まかにこの辺って表していました。もっと言うと、既に整備された山林が、地図上で何処になるか・どんな形かを記録していなかったのが事実です。これでは、その内に誰も分からなくなってしまうのでは、ないのでしょうか?そんな危惧もあり、私の疑問に繋がっていく訳です。

【 QGIS 】

 私の問い 「 そんなに投資が出来ないながらも、小規模な範囲でも GIS で管理出来ないのだろうか?」に対する答えは QGIS( https://qgis.org/ja/site/index.html )にありました。

QGIS は “フリー・アンド・オープン・ソース・ソフトウェア( FOSS )の上に構築されていることを誇りとするプロフェッショナルな GIS アプリケーションです” との事。

 つまり、フリー( 無料 )です。昔から日本では「 タダより高いものはない!」と言いましたが、QGIS はオープン・ソース・ソフトウェアです。ざっくり言うと、全世界の優秀な有難い方々が作り上げたソフトウェアになります( ありがとうございます )が、情報等はしっかりと自己で管理してセキュリティー強化もしておいた方が良いと思います。

 ただし、日本企業からお金を出して購入したソフトウェアではありませんから、手厚いサポートも受けられませんから、セキュリティーを含め自己でしっかりを管理する必要があります。さらに、QGIS だけをダウンロードすれば全部が出来る訳では無く、自分が必要な機能はプラグインと言う形で、組み込む必要があります。ちなみにプラグインもまた、全世界の優秀な有難い方々が作り上げたソフトウェアになります。この後で、少し触れる GPS データの読み込みも、プラグインを使っています。

【 実施例 】

 まず、測量時点に行うべき事があります。BP つまり 0 の測点での座標を取ります。この座標は、スマートフォンの位置情報を使って取ります。もし、0 で座標が取れなくても、別の測点で取れれば OK です。ちなみに、GPS で座標を取得する場合、山の中では誤差が出ます。プラマイ3とか5mだと、とても良い数字だと思います。

 測量が終わったら、データ入力して QGIS に読み込む形式にファイルを出力します。この形式は、シェープファイルと呼ばれ、QGIS のベクタレイヤに読み込まれる形となります。つまり1つの測量データにつき、1つのベクタレイヤとなってくる訳です。ちなみに、このベクタレイヤ内には属性データが存在しており、例えば事業年度・事業名・地番・所有者名等を入れ込んでおく事が出来ます。

 ※ 注意 ※ 

森林所有者名等の個人を特定出来る情報は、個人情報になりますので直接入力しておくのではなく、自分ルールで暗号化しておいた方が良いと思います。

 前の話で、GPS 座標には誤差が出ると書きました。実際 QGIS に読み込んだ際に、微妙にずれている事がありますが、これを動かす事も出来ます( 地物の移動、と言うそうです )。ですので、実際測量した際には、大まかに地形を覚えておく事をお勧めします。

 この様な手順で次のような形になります。例えば、施業年度毎に色分けする事も可能です。

 次に、作業道の路線図も同じ様な手順で作成可能ですが、もう1つ歩いた軌跡からも QGIS に読み込む事が出来ます。測量する際には、座標を調べる必要がありますが、アプリで軌跡を取得する際には、ある時点での座標を取る様になっているので、いちいち取得する必要はありません。ちなみに GARMIN 等の GPS 機器も、軌跡を取る時はそうしているんじゃないでしょうか。 軌跡を取得した際 QGIS に読み込む為に、必要なのがプラグインです。

 実際、こんな形になります。

 最後に、QGIS の印刷機能( プリントコンポーザ )は非常に優れています。位置図等を印刷する際に、スケール・方位マーク・凡例・縮尺指定・テキスト挿入等々の多種多様な設定が可能となっています。

 今回は、添付していませんがインターネットでも出力例を閲覧可能だと思いますので、ぜひご覧ください。

 以上となります。くどい様ですが「 そんなに投資が出来ないながらも、小規模な範囲でも GIS で管理出来ないのだろうか?」を実現する為にやっています。新たな記事があれば、不定期に更新していきたいと思います。

ただ、今後の林業界もこの様なソフトウェア等が必須になってくるのだと思います。